分類思考の世界
分類学という学問についての本です。
全体的には、分類と切っては切れない関係にある生物学的な分類についての考察が中心になる。ただ、専門科学としての分類と日常生活の分類、それぞれが持つ問題や、方法論はやはり共通する部分がある。
バラバラの対象物を少数のグループに分類して整理するシーンはたくさんある。物を探すとき、仕事で書類を引き出すとき、はたまた洗濯物を効率よく干すときなども分類思考を使っているのかもしれない。記憶や思考の整理になる。
そんな中うまく分類ができない事柄があるとヒトは混乱するし、ストレスを感じる。その例として面白かったのが”カモノハシ問題”。
カモノハシは魚類と鳥類と四足類の3つの性質を兼ね揃えている。
分類困難な変わり者で、要するに綺麗に分類できなかった。
分類学者は大いに悩み、論争し、今までの分類体系そのものが揺らぐような事態になったそうな。
ただ、この問題の根っこはカモノハシ側にあるのではなく、ヒトがそれまで作り上げてきた分類体系と分類理論にある。カモノハシはカモノハシなだけ。
分類行為の根幹は突き詰めると、どこからが山か?のような、在る とか 無い などの哲学、形而上学に発展するし、人間の認知能力、言語にも深く関わってくる。
分類する宿命を生まれながらに背負わされたヒトという生き物 が抱える分類の問題、興味深い。
- 作者: 三中信宏
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2009/09/17
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